どのような疾患か?


 一言でいうと、「わかっちゃいるけれど、やめられない」という疾患である。

 もう少し、詳しく言うと、「飲酒をすることによって、仕事、家庭、経済、司法、健康といった様々な領域で問題(飲酒問題)が起こり、飲酒行動を弱化させる(飲酒を控える/しない方向への)圧力がかかっているが、弱化しないため、飲酒問題が執拗に続く」という疾患である。

 ICD-10(WHOが作成した国際疾患分類)には、以下のように記載されている。

過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合
1.飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
2.飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3.断酒あるいは節酒したときの離脱症状
4.耐性の証拠
5.飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6.明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

離脱症状(リンク):体内のアルコールがなくなっていく際に起きる不快な症状。

 急性期離脱と慢性期で症状が違う。アルコールは中枢神経抑制薬なので、
 連日の大量飲酒=いつも脳の働きを抑える薬がある状態
 となる。その状態で、機能を果たすために脳は、より興奮する方向に傾く。そのため、断酒や節酒をすると、脳は過剰に興奮してしまう。自律神経の中では、交感神経と優位になるために、以下のような症状が出る。これを急性期離脱症候群という。早ければ、最終飲酒から数時間で始まり、おおむね、2週間程度続く。

急性期離脱症候群の症状
・血圧上昇・脈拍増大
・発汗:額から玉の汗が噴き出ている人、就寝中に下着を何回も交換する人もいる。
・手の震え:体全体が震える人もいる。
・発熱
・不安焦燥感:じっと座っていられず、意味もなく徘徊して回る人もいる。
・知覚過敏:音や光に敏感になる。幻覚が出ることもある。
・睡眠障害

 離脱症状が重度になると、全身の痙攣発作(アルコール性癲癇)、意識障害+幻視(いないはずの虫や小動物が見える)・幻聴+興奮(アルコール離脱せん妄)が起きたりする。

 当事者達は、急性期離脱症候群について「何と言えない不快な感じです。お酒を飲めば、ピタッと止まるのがわかっているだけに、我慢するのが辛いです」などと語る。

 映画などでは、依存症者は、「むさくるしい男が、一升瓶を抱え、震える手でコップに酒を注ぎ、飲むと、気持ちも手の震えも落ち着く」という姿で描かれるのが定番である。これは、急性期離脱症候群になった依存症者が、<自己治療>として飲酒をしている姿である。

 急性期離脱症候群が治った後に起こるのが、慢性離脱症候群で、最終飲酒後、3~9ヶ月程度続く。

慢性期離脱症候群
・多動、衝動的
・不安焦燥感
・気分変動が激しい
・考えがコロコロ変わる
・易刺激的、易怒的
・攻撃的、他罰的